第21条です。本文から。
(損害賠償請求権)第二十一条 市町村は、給付事由が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付を行ったときは、その給付の価額の限度において、被保険者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。2 前項に規定する場合において、保険給付を受けるべき者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、市町村は、その価額の限度において、保険給付を行う責めを免れる。3 市町村は、第一項の規定により取得した請求権に係る損害賠償金の徴収又は収納の事務を国民健康保険法第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会(以下「連合会」という。)であって厚生労働省令で定めるものに委託することができる。
ここでは、介護保険の保険給付が行われた事由が「第三者の行為」によるものである場合についての取扱いについて述べられています。
健康保険の保険給付においても話題になるところですが、例えば、とある75歳の男性(介護保険の被保険者)が散歩中に自動車に撥ねられ、全身を強打したことが原因で要介護状態となってしまった、という事例で考えてみます。
この場合、他の誰かが運転していた自動車に撥ねられた、という事実が男性の要介護状態を導き出したのであり、自動車の運転者(第三者)は民法や自動車損害賠償保障法を根拠として、男性に対してその事故によって生じた損害(全身打撲の治療や男性の介護に要した費用など)を賠償する義務が生じます。
通常であれば、自動車の運転者の自賠責保険や(加入しておれば)任意保険から支払われる保険金をもって損害賠償が行われるのですが、こうした賠償がなされないまま(又は賠償がなされる前に)男性の要介護状態に対して介護保険の給付が行われた場合、その保険給付の取扱いはどうなるか?、ということなのです(スイマセン。前提が長すぎました)。
まず、賠償がないままに保険給付が行われた場合ですが、保険者たる市町村は、その保険給付に要した費用の額を上限として、本来であれば男性が自動車の運転者に対して有する損害賠償の請求権を取得する、ということになります。
この事例では、元々加害者である自動車の運転者が被害者である男性に直接支払うべき損害の賠償を、介護保険が保険給付という形で肩代わりしていることと同じ状態なのです。これは介護保険制度の趣旨に反しますし、その際に要した費用は自動車の運転者によって補填されるべきです(もちろん、民法にも反して「責任逃れ」ということも言えるでしょう)。
で、男性の損害は保険給付によって「賠償」されていますので、その損害賠償請求権は自動車の運転者に代わって「賠償」した市町村が取得する、ということになるのです。また、その損害賠償金の徴収や収納に関して、国民健康保険団体連合会のうち厚生労働省令で定めるものに委託することができます。これに関して、介護保険法施行規則をひも解きますと…、
第三章 保険給付第一節 通則(法第二十一条第三項の厚生労働省令で定める連合会)第三十四条 国民健康保険団体連合会(国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会をいう。以下同じ。)であって法第二十一条第三項の厚生労働省令で定めるものは、同項に規定する損害賠償金の徴収又は収納の事務に関し専門的知識を有する職員を配置している国民健康保険団体連合会とする。
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